現場プロダクトマネジャー対談

リクルートというフィールドを通じて実現したい理想の世界とは

「世界」をキャリアのバックボーンに置き、先端領域で活躍するプロダクトマネジャー、甲斐駿介と蔦田慎史。未来のITを担う2人のプロダクトマネジャーに、リクルートというフィールドを通じてどんな理想の世界を実現しようとしているのか、話を聞いた。

プロフィール & キャリアパス

学生時代
東京工業大学在学中から友人と飲食店の共同経営を行っていた。未経験ながら最高の環境で経験を積みたいとプログラミングを猛勉強し、同時期にGoogleでのエンジニアインターンを経験。
キャリアパス
  • 2016年、リクルートライフスタイルに新卒入社。会計業務システム『Airレジ』を開発。入社1年目に社内MVPを獲得。
  • 2017年、『Airメイト』の立ち上げの際、プロダクト責任者(プロデューサー)に。
  • 2018年、Indeed出向に伴い渡米。
現在
IndeedおよびリクルートのHR事業横断チームでプロダクトマネジャーを兼務。
学生時代
高校時代に馬術に没頭し、卒業後はプロの馬術選手として活動。全日本4位に入賞し、世界一を目指す。その過程で「経済」と「ビジネス」の仕組みに関心を持ち、学術的に経済を学ぶことを志し、渡米。UCLAとOSU入学。経済学とComputer Scienceのダブルメジャーで卒業。
キャリアパス
2016年、リクルートホールディングス入社後、ブログウォッチャーに出向。データサイエンティストから、プロダクト組織のリーダーを務める。
現在
ブログウォッチャーでプロダクトマネジャーを務める。

データから生まれる先端領域をビジネスにする

はじめに、現在お二人が担当されている仕事内容を教えてください。

僕は2016年にリクルートに入社し、その後すぐにブログウォッチャーに出向、現在はプロダクトマネジャーという立場で業務を行っています。

ブログウォッチャーでは、さまざまなパートナーと一緒に位置情報を利用したプロダクトを開発して提供するということを行っています。例えば、経済産業省の日本初の衛星データプラットフォーム『Tellus(テルース)』への統計情報提供などです。そもそも位置情報データというのは非常に汎用性が高いので「いろんなところで使えそう」と思われがちですが、実際にビジネスでオペレーションしていくとなるとその都度ドメイン知識が必要になってきます。最初の頃はブログウォッチャーにはデータを扱える人材がそう多くはありませんでしたし、僕ひとりで動くのも限界がありました。そこで、社外のパートナーと連携したほうが効率が良いのではないかと考えて、行き着いた先が現在の事業形態でした。

それに現在、GAFAなどプラットフォーマーが世界のデータの大部分を所有していますよね。一方で世の中には、国土交通省のコンサルティングをする会社や、特定の業界専門のマーケティング会社など、ニッチな事業を展開する会社がたくさんあります。それらの企業は企画力に長けていて、面白い施策を打つことが得意です。でも、データを保有していないというだけの理由で、実現が不可能になることも多々ある。本当に世界をデータ活用が可能な社会にするなら、データをいろんな人が使えるようにする必要があると思うんです。いわゆる「データの民主化」ですね。それもパートナーと協働するという発想に結びついた動機のひとつでした。

僕は現在、IndeedおよびリクルートのHR事業横断チームでプロダクトマネジャーを兼務しています。

そもそもIndeedという会社では人のオペレーションを介さないようなHRのDX周りのデータプロダクト全体を作っているのですが、そのプロダクトを通じた雇用も着実に生まれ、アメリカの雇用市場で大きなインパクトを与えるレベルにまで成長しています。『Airメイト』のプロダクト責任者を担当していましたが、自分がグローバルに挑戦したいと言い続けていた意思を汲んでもらい、Indeedに異動することになりました。

現在もIndeedの業務に携わっていますが、コロナ禍になって業務の大半がリモートワークになったこともあり、一度日本に戻ってきてリクルートの仕事と半々ぐらいのボリュームで業務を行っています。

「ビジネスをやるなら、
もっとでかいことをやれ」

リクルートに入社してからのキャリアパスを教えてください。

僕は入社して以来ブログウォッチャー1本なので、一つの組織の中でのキャリアになるのですが、だからこそ若手のうちから組織づくりや会社経営の観点で中長期的に取り組むことができました。

それこそ入社当初は、社外の人への営業を通じて議論を重ねながら、事業の立ち上げを懸命に行っていました。感覚としてはブログウォッチャーとしてやっているというよりは、まだなかった位置情報業界をフロントランナーとして作るんだという意気込みでやっていましたし、上司からもそれを期待されていました。結果、時代の後押しもあり、業界の立ち上げに関われ、自分もそれなりの役割を果たせたと思います。

こういう一人で「外」に出て動きまくるというのはもともと得意だったし、悩まず素直にやれました。一方で最初は目が向かなかったのは「人」にまつわること。一緒に働いてくれている人たちについて考えるということに意識がありませんでした。

これは一つの組織で続けてやっていたから、というのもありますが、上司がずっと注意してくれたからこそやっと気づけたものです。仲間たちが何が得意で、何をしているときが楽しくて、何がいやなのか。みたいなことを自然に考えられるようになったのが僕にとっての一番の変化ですね。それがないと組織の形をどうすべきとか、中長期の戦略がどうだみたいな議論はあまり意味がないのだなということに気づけました。

対照的に甲斐さんは様々な部署を経験されていますね。

リクルートに入社してからだと、まずSMB※向けサービスプラットフォーム『Air ビジネスツールズ』を開発するデータ組織に配属されました。そこで「データを使ってどんな価値が出せるのか」ということを考えたときに、店舗の仕入れや来客、シフトなどのデータを全部つなげながらAIを使って経営をサポートするという、先ほどの『Airメイト』というツールのアイデアを考えました。

そもそもさまざまなデータを組み合わせた複雑なオペレーションは、大企業でなければ構築が難しい。でも、リクルートならば多少コストがかかったとしても最初から多くの店舗に対して展開できるため、高機能な経営マネジメントツールを作ることができる。そこで、入社直後ではあったのですが、早速社長の北村さん(株式会社リクルート代表取締役社長)に構想を直談判しました。北村さんは1時間ほどかけて話を整理してくれた上に、あさけんさん(当時の株式会社リクルートライフスタイル代表取締役社長)も交えてまずは提案に書いてあるこの部分から少しずつやってみろ、と後押しをくれました。

そこで、まずはすでにあるサービス『Airレジ』の業務改善を実施しました。登録ユーザーのアクティブ率を倍にすることを目標にして、開発体制の効率化とカスタマーサポート体制の充足に力を入れたんです。結果、無事に目標達成。その功績が評価されて、3か月後には社内MVPを獲得することもできました。その経験を足がかりに、ようやく『Airメイト』の開発に着手することができ、プロダクト責任者となりました。

SMB(Small and Medium Business):「中堅・中小企業」の意味。

その後、Indeedに異動されたんですよね。

実はちょうどその頃、北村さんから声をかけられて「Ronyさん(Indeed創業者、リクルートホールディングス取締役)と出木場さん(RGF OHR USA, Inc. CEO and Director。2021年4月よりリクルートホールディングス代表取締役社長兼CEO)が日本に帰ってきてるから、会ってみろ」と誘われました。それで実際に2人に会ったら、「『Airメイト』を3分でプレゼンしてほしい」と言われて。下手くそな英語でどうにか説明したのですが、そこで今まで誰からも聞けなかったようなプロダクトのフィードバックをもらうことができたんです。

というのも、非効率な業界に向けて何か新しいインターフェースを作る時は、難しいものにしてはダメなんです。しかも、裏はすごいテクノロジーを使っていても、表は使いやすくて簡単なものにしなければいけない。ただその時、出木場さんから「甲斐くんのやっていること、まだまだ小さくない?リクルート全体で2兆を超える売り上げがあるのに、そのうちのたった数十億。もっとでかいことやろうよ。」とも言われて。あの言葉は衝撃的でしたね。

Indeedに出向してからはいろんなことを体験させてもらいました。自分達の作ってきたプロダクトが2年でアメリカにおける雇用シェアにインパクトをもたらすレベルになりましたし、あれほどのスピード感は、なかなか日本では味わえない。あとは、世界トップレベルのチームと一緒に仕事ができたことも良い経験になりました。

リクルートの文化に秘められた視座の高さ

お二人は、なぜリクルートで仕事をするという選択をしたんでしょうか。

旅行でも仕事でも、日本の外に出るたびにいつも強く実感するんですが、日本人には日本人の持って生まれたバランス、らしさがあると思っています。それはビジネスにおいてもそうです。例えば、日本人は勤勉さや緻密さ、丁寧さといった特徴を持っているとよく言われますが、リクルートのビジネスの場合、テクノロジーに振り切るのではなく、その時代にある便利なテクノロジーをプロデュースしながら新しい事業を作ってしまうという、ある種の丁寧さを含んだバランス感覚があるんです。

そういう会社の場合、世界と対峙しようとしたときに、みんながみんな同じバッターである必要はないんですよ。盗塁のうまさだったり、バントのうまさだったり、それぞれの特徴を生かしながらバランスの中で世界という目標に近づいていけばいいわけですから。リクルートだったら、そういう感覚を磨くことができると思ったのが一番の大きな理由ですね。

一人ひとりがわかりやすいホームランバッターではないし、会社としても別にものすごい技術アセットがあるわけでも、ずっとこのまま使い続けられるサービスを持ってるわけでもない。でも、その時々でモノやサービスを作って、世の中に大きな価値を生み出している。とにかくそれぞれの得意分野だったり、個人の意思みたいなものを尊重してくれる。だから一つのことに深くなって考え、磨いて、再創造できる。それはこのリクルートという組織の文化に成り立っていると思います。一言で言えば、「青春してる人」が多い。なぜそうなってるのかを学びたくて、入社しました。

僕の場合、UCLAの学生時代がきっかけです。卒業旅行がてら、サンフランシスコに赴く機会があり、そこでたまたまリクルートの人に会いました。そこで10分くらい将来の仕事の話をしたんですが、「世界一を目指すんだったら、リクルートに来たらいいよ。君みたいな人が必要だから」と言われて。UCLAは企業の人との面談も多いので、それまでいろんな方には会ってきたんですが、そんなに速いスピードで意志決定する人なんていなかったから、びっくりしたんですよね。

社長レベルの人の視座が高いというのは、ある意味当たり前の話じゃないですか。でも、現場で働いている人でも高い視座で力強く話をしてたのはとても印象的で。そこにビビッと感じるものがあって、リクルートを選んだんですよね。

確かにいろんな社員から刺激を受けられるというのはそうかも知れない。さっきのIndeedに移る前の出木場さんとRonyさんからのフィードバックもそうですが、例えば出木場さんはまさに未来を見てきたかのように話すところがあって。プロダクトがどう社会を変えるかという想像が非常にリアリティが高くてそのうえで重要な数字などもすぐ出てくる、そんなところまで徹底的に考えきっているのかと刺激をうけました。さまざまな強みを持った社員がいて、そこから刺激をうけることができるのはリクルートの特徴だと思います。

「間に入る」ことが持つ、
本当の価値とは?

現在、お二人が仕事をする上で、特に大切にしていることはどんなことでしょうか。

僕の仕事は「データを使って効率化する」ということが中心になるわけですが、それ自体は確かに面白いものの、どうしても無機質な感じを受けてしまうこともあるんです。だからたまに、「これで本当に人間は幸せになるのかな」と考えることがあります。

すごく当たり前の話ではあるんですが、やっぱり人が大事なんです。だから、一緒に働いている人だったり、お客様だったり、自分自身だったり、みんなが本当に幸せになれるのかはしっかり考えたい。逆を言えば、そういうものを一切排除して効率化していくという発想はすぐに思いつきやすいんです。でも、人が生きていくってそういうことではないじゃないですか。

僕らは今、自動化の時代の真っただ中に生きていて、機械による自動化、要は産業の自動化が進み、今はAIなどによる知的活動の自動化をしている段階です。もちろんリクルートでも取り組んでいますし、社会の動きとしてみんなやってるよねっていう。それはとても価値あることだしやりましょうと思う一方で、もう少し視野を広げるといずれ「アフター自動化」というような時代がやってくるはずだと思うんです。そういう時、自分たちは何を大切にしてプロダクトを作ればいいのか。もちろんそこには答えはないんですけど、そのヒントに人の幸せというものがある気がするんです。だから、「人を幸せにするためには、何ができるのかな」という視点は常に持っていたいと思っています。

僕の場合、「人が持っている物差しを変えられるような仕事したい」ということはずっと頭にあって。それは別に小さなプロジェクトでもかまわないんですが、その中でも「そんな方法あったんだ」とか、「こういうやり方をしたら10倍良くなるんだ」というようなものは提示していきたいな、と。これをやれば確実に5%改善できるみたいな真っ当な取り組みだと、自分よりもっと頭がいい人がすぐに取り組むし成果も負けてしまう。だから他の人が思いつかないようなめっちゃ斜め上、それ故に成果も3倍になるみたいな、しかもそういう考え方あるんだっていう気付きを周りに与えられる、みたいなことに取り組みたいですね。

一方で「誰の困っている不を解消するのか」または「その解消の仕方をシンプルに言えるか」ということは意識しています。物差しを変えるといっても、誰も変えてほしくないものだったら独りよがりになる可能性もあるわけです。結局誰の何がどれぐらい良くなるのっていうのをシンプルに言えるか。それが大事だと思います。

それは、すごくわかる。プロデューサーの本質というのは、要は“Find the right question”を考えられるかどうかだと思います。そこに力を費やさないと、プロデューサーだったりディレクターだったり、間に入って調整する人たちの価値はない。

論理的にできる決断は、それはそれでやったらいいんだけど、ほんとに大事なのは哲学的というのか、形而上学的にというか、「こうしたい」「こうするべき」みたいな決断が本当に難しくて。間に入る前までは、そんなことやったらいいじゃんとしか思ってなかったけど、いろんなシチュエーションが絡んで、さらには関係者もたくさんいるという状況になると、「こうしたい」「こうするべきだ」という決断を下すことが本当に難しくなる。でも、一番はそこが重要なんだというのは、僕も実感としてあります。

変わり続ける社会への飽くなき興味

先ほど、甲斐さんから「青春をつぎこめるようなことがしたい」というお話が出ましたが、お二人にとってそれはどんなものでしょうか。

この先30年先くらいのことを想像すると、今後いろいろな仕組みが変わっていくと思います。例えば「安全で楽なオンライン選挙システム」、「パーソナライズされた教育」、「速くて安い金融システム」などいろんな仕組みが、そろそろアップデートしないと第二次世界大戦後ぐらいから、変わっていないわけですよね。

それがいろんなビジネス、たとえば僕らがやってるようなHRビジネス1つとっても、働くまでにそんなに時間かかるんだっけと。求人を出したら、1分後には候補者が集まってる状態にできないんだっけ?そもそも企業側が求人票を毎回書くんだっけ?とか、いろんな仕組みが、テクノロジーの変化だけじゃないと思うんですけど、変わっていくと思うんです。

最近はそういう社会全般の変化について考えを巡らすことが非常に多くて、自分だったらどういうふうにやるかというのを常にシミュレーションしていますね。

だから今はHRの体験を全く変えてみようとしていますが、すごく時間がかかる。でも誰がやるかで、やっぱり速さが変わる。より速くそこに行けるかもしれないし、想像以上により良くできるかもしれない。そういうことをやっていきたいです。

仕組みの変化ということで言えば、データの民主化がまさにそうです。さっきの甲斐くんの話でも、スクラップ・アンド・ビルドってまさにそうだなと思います。会社単位で見ても、アメリカみたいにスタートアップがどんどんあって、社会のリソースがスタートアップや個人に集まるような社会もあれば、日本みたいにそうじゃないところもあって。別にどっちが正解というわけでもないですが、僕の考え方を言うと、既にリソースが集まっているんだったら、優秀な人間が自由に使えるようにしたらいいじゃないかと思ってしまうんです。個人的な考え方ではありますが、リクルートは、まさにそういうことを率先していける会社だと思ってます。

リクルートだからこそ、
実現できることがある

最後に、今後リクルートで実現してみたいことはどんなことでしょうか。

僕個人としてはバイオテックやライフサイエンスに興味があるんですが、リクルートでは、「やっぱ、やめた」と言えるような社会にしたいなという気持ちがあります。つまり社会にいる一人ひとりが「次」の決断を簡単にできるようにしたい。自分自身が馬術から海外大学へと様々に挑戦するフィールドを変えてきたからというのもあるんですが、簡単にやめることができると、逆にいろんな決断がしやすくなるんじゃないかと思うんです。

いわばキャリアチェンジやライフチェンジを誰もが簡単にできるような社会にしたい。そういう社会であれば、いまやってることを「やっぱり、やめて」つぎのステップに移れるようになるはずです。今は次にいくハードルが高すぎて、新しい機会に飛び込めない人もいます。もちろん、それを可能にするにはいろんな条件があると思いますが、それができたらもう少し大局的な考えも生まれてくるのかな、と。「はじめる」ためには、「やめない」といけないし、そのためには極論「やめる」っていう言葉へのネガティブイメージを変えたいと思っています。

また、学生の方と話して思うんですが、働き方として、自分自身を会社に見立てて、その中のプロジェクトの1個としてリクルートやいろんな会社があるぐらいのつもりのほうがいいんじゃないかなと思います。そうなればもっと自由にいろんなプロジェクトに携われるようになるし、今以上に仕事が楽しくなると思うんです。

僕自身も仕事がつまらなかったら辞めればいいかなと思っているタイプなので、そこまで真剣に考えたことはないですけど、蔦田くんのプロジェクトの話ではないですが、リクルートにいなかったら、アメリカでビジネスはできなかったし、3年目でマネジャーをやることもなかった。それを経験して大きくなったから、いろいろ自分の会社もできてることを考えると、この会社だからできるスケール感のある打席などはあると思います。やっぱりリクルートで何かを実現するとしたら、大きな産業のリシェイプや再構築に挑戦したい。特にHRの領域に関しては、リクルートの文化だからこそやれることがあると思うんです。通常の会社ではできないものには、やっぱり挑戦し続けていきたいですね。