• 役員

目指すは「ONE RECRUIT」
一貫性のある体験を
社会に提供していきたい。

岩佐 浩徳
株式会社リクルートテクノロジーズ
ITマネジメント統括部
サービスデザイン1部
1994年新卒入社

誰もUXなど知らない時代から、
リクルートにはその概念があった。

現在の業務内容を教えてください。

現在は、リクルートテクノロジーズITマネジメント統括部に本籍を置き、UI・UXの観点から「リクナビ」「TOWN WORK」などの開発、サービス改善などを行っています。また、リクルートのグループ各社にも出向兼務という形で入っていまして、全社横断的にマーケティングの支援をしています。

その中でも、もっとも注力し、取り組んでいるプロジェクトがあれば教えてください。

2012年にリクルートは領域単位での分社化を行いました。機能を細分化して、事業会社ごとに自立自走することで各事業のさらなる成長を目指した決断と理解する一方で、サービスデザインという視点で見ると、この細分化した事業運営には難しい側面もあると感じていました。プロモーションやサイト改善をWebサイトごとにバラバラにやるというのは、リクルート全体でカスタマーの体験価値を高めていく上で阻害要因ともなりうるリスクを孕んだ考え方で、本来あるべきサービスとしての目線ではないのではないかと。どこのWebサイトのどのページが良ければいいという問題ではないのです。ですから、リクルート全体が一体となって動くために、事業組織は縦割りの状況であっても、一蓮托生の状態にもっていくことが僕自身のミッションだと思っています。そのためにも、今は我々のような技術を持った部隊とサービス間の連携を強化し、事業戦略とサービス設計と開発実装が三位一体で動けるように、座組を整えているところです。

その成果はあがっていますか?

今、リクルート全体でいうとUX業務に関わっているメンバーは300人くらい。UX周りに携わる人間が300人もいる会社って、世の中にそう多くはないのではないでしょうか。この専門スキルを持った300人がONEチームとして同じ方向に向かっていけるようになったら、ものすごいことができるのではないかと思います。リクルートテクノロジーズがハブとなり、「ここぞ」という局面では、グループ全体のリソースである優秀なエンジニアを、会社をまたいで投入することだってできる。このように、“知”や“技術力”をリクルートグループ内で共有するという部分でも、組織間の連携強化は必須ですね。

大切にしている考え方やポリシーはありますか?

先ほどの話とつながるのですが、大切にしているのは、「ONE RECRUIT」という考え方です。僕自身の入社は、 当然、分社化前ですから、意識としては今も昔も常にリクルートのイチ社員です。ところが、リクルートホールディングス体制の元で、各社ごとに『あちらさん』『そちらさん』『おたく』といった感覚が生まれてしまったことも事実です。経営的なバリューでみれば、いい側面もたくさんあるのですが、こと人間関係となると、そこに何かしらの壁ができてしまったのではないかと感じています。しかし、社名は違っても、社会に対しては全てがリクルートのサービスですからね。一貫性のある「ONE RECRUIT」体験を提供するためにも、その壁を取り払って、誰もが「俺はリクルートの人間だ」と言える状態にしたい。これは、自分自身の芯として成し遂げたいことでもあります。
ただ、こういう進化って、普通よりだいぶ時間のかかる気の遠くなる作業なんです。「できない」と言ってしまいたくなるほど成果が出るまで時間がかかることもありますが、事業には潮目みたいなものがある。進化のためには、その潮目を我慢して待つことも大事だよって、そんなことを、日頃からメンバーには話していますね。

入社前はどのようなことをやっていましたか、また入社の決め手を教えてください。

多摩美術大学で情報デザイン学科を専攻し、在学中から、UX専門のデザイン事務所で契約社員として働いていました。その先輩の紹介で、リクルートのメディアデザインセンターという研究開発部門に入ることになったのがきっかけでした。その部署のミッションとして掲げられていたのが、「いつか紙だけで戦える時代は終わる、10年後に今のリクルートが潰れてもいい状態をつくれ」、もっと端的に言うと「10年後のリクルートを潰せ」というものでした。紙に代わる新たなメディア、新たなプラットホームを見つけ、作りあげる仕事は興味深いもので、今でこそUXは一般的ですが、そんな概念すらなかった時代に、リクルートは行為としてのUXを行っていたんです。社会の中にカスタマーにとっての新しい価値をどう見出して、どういうセグメントに対してその価値をどう昇華させサービスとして提供するのか。そんなリクルートの活動が、自分の学んでいたユーザー中心のデザインと畑は違っても似たようなことをしているな、面白そうだなと感じたのもきっかけですね。

UXデザインを通して
社会のシステムに触れる
醍醐味

最も印象に残っているエピソードは何でしょうか?

当時はリクルート全社が1組織として動いていたのですが、僕一人で平均10プロジェクトを並行して抱えていました。まさに紙からネットへという時代の真っただ中でしたが、「ホットペッパー」は依然として紙のままでした。そこで勝手にカスタマー調査を行い、「今やらないと、今やらなかったら一生勝てませんよ」とネットへの移行を提案したんです。その後、他の類似サービスに遅れながらもネット化が進むことになり、そのきっかけの1つになれたかなって実感できたことは今でも鮮明に覚えています。

大変だと感じる案件はありますか?

今、数年先の「リクナビ」の戦略も企画し始めていますが、やはり新卒採用の領域は特殊です。住宅にしろ、旅行にしろ、リクルートの他のサービスが促す意思決定は、カスタマーにとって何度か経験するものでイベント性が薄いので、ある特定の決まったタイミングというのはありません。ですが、新卒採用だけは、社会全体でも定められている“3月1日”というスタートラインがある。海外であれば状況も違うのでしょうが、日本においては、まだまだ就活は1度きりという状況ですから、学生が行うその意思決定の重みは相当なものです。ヨーイスタートで始まり、かつ終わりのある1年をかけた駅伝のようなものです。企業としても、インターンシップなど前々から様々な準備を行い、3月1日に「ヨーイスタート!」と一斉に走り出す。
なので、我々としても3月1日に掛ける想いは強い。そこに向けてただぼーっと待っていても、仕方なくて。成果に向けた仕込みというのは3月1日前から始まっています。たとえば、過去のデータをもとに行動と結果の因果関係を解明しながら、最適な行動プランなりナビゲーションを積み上げていくのですが、この作業はなかなか難しく、最適解が1つではない。そういった意味では、数あるリクルートのサービスのなかでも、「リクナビ」は唯一無二のユニークな事業ですね。

リクルートという会社にいる醍醐味や面白さのようなものは、どういったところにありますか?

自分の仕事を通して社会のシステムや通念、概念のようなものに触れられる点でしょうか。入社22年たった今でも、リクルートは、社会に作用する可能性が一番高い企業だと思えている、だからこそ、ここにいるのだと思います。業界的には希少な職種・専門性なので、他のキャリアもあったのかもしれませんが、UXデザインを通して自分で成し遂げたいことを考えたら、ベンチャーでは解決できる範囲が狭く、今やれているほどの組織立った仕組みは作れないんです。そう考えると、やはりリクルートのスケールが必要ですし、今もそのメリットに魅力を感じていますね。

「0→1」と「1→100」、岩佐さんはどちらに当てはまりますか?

今担っている領域で言えば、「1→100」。もしくは、100を105にすることかもしれないですね。0からその領域を切り開いてく「0→1」の仕事も当然たくさんあるのですが、例えば、すでにあるサービスが新しい価値を提供できないのかと言えば、そんなことはありません。たとえば、検索ひとつをとってみても、今提供しているディレクトリ検索ではすべてのカスタマーのニーズを満たせているわけではありません。目的はまだ漠然としている中で探し出す人もいれば、雰囲気で「これだ!」というものを見つけたい人もいる。価値をどこに定めるかによって、探し方も大きく変わってくると思います。 また、世の中一般にある既存の仕組みや考え方を変えるとか、社会問題を解決するとなれば、そのためのアプローチも、これまで培ったものとは全然違うかたちで考える必要がある。このように、既存の事業サービスの中にも、小さな「0→1」はたくさんあるはず。そう思うと、どちらの可能性もあるのだと思います。
よく新卒で入社したメンバーが「UXデザインをやりたいんです」「0→1に携わって立ち上げをしたいんです」と話してくれますが、リクルートを支えているほとんどの仕事は、もっと泥臭い部分であるってことも知っていて欲しい。ベンチャー的に0から1を作る仕事ももちろんありますが、「1→100」の中にも小さい「0→1」を生み出す仕事はたくさんあります。これまでつながりの持てなかったカスタマーに、新しいユーザー体験を与えるといったことも含め、我々がやり切れてないことはまだまだあります。リクルートのUXデザインにおいては、「0→1」と「1→100」、どちらも同じくらい大事なアプローチであることを、わかっておいてもらえたら嬉しいですね。

これからどのような仕事をしていきたいですか?

僕はこれまで、おそらく500以上のサービスとなんらかのかたちで携わってきています。しかし、現時点でのリクルートのサービスはある意味、自動販売機的ともいえる気がしています。「ここには30万種類の商品が入っています。 選択肢は僕らが責任を持って用意しましたから、あとはご自分の意志で選択してください」と。それこそ今は、レコメンドのパーソナイズメールなど、テクノロジーによって「あなたへのおすすめ」も提案できるようになりましたが、そうすることで逆に多少の押しつけ感も出てきてしまいます。また、能動的に選択し、行動できるカスタマーには提供できているサービスも、一方で自分では判断が難しく、なかなか動けないカスタマーには届かない歯がゆさが依然として存在しています。Webサイトを改善し、コンバージョンレートを上げるためのアプローチが、その選択弱者のカスタマーを切り捨てることにつながっているのではないか。そんな、これまで受け止めきれていなかった莫大なカスタマーに、今後、どう情報を届けていくかが課題ですが、実は、そのヒントは、アパレルショップのスタッフやバーテンダー、旅館の仲居さんにあると思っています。例えばバーテンダーならば、「今日、ちょっとお疲れじゃないですか。元気になるもの作りましょうか」とか、アパレルショップのスタッフなら、「この人はあまり話しかけてほしくない人」「この人は最新の情報を教えてほしい人」ということを一瞬で判断しているように見えるんですね。我々が、全く足元にも及ばないサービスを行っている。結局同じ洋服を売るというサービスでも、ただ、そこに接客っていうそのサービス体験が加わったときに、全く違うサービスを提供しているわけですよね。そのことを踏まえ、僕は「某ファッションビルの店員さんを超えるサービスに進化させよう」と呼びかけていて、これこそが、我々が目指すべきものなんです。

大切なのは、
「何を成したいか」

将来の夢を教えてください。

僕は3人娘がいるのですが、その子たちが進学、就職という局面を迎えていくと思うと、今の状態のままではかなりしんどいだろうなと思います。ですから、彼女たちが多様な選択ができ、多様な悩み方ができるような社会にしたい、その状態にもっていきたいというのが夢というか希望です。また、社内のことで言えば、日々悩み苦しみながらもイキイキと成長している新卒入社メンバーの、さらなる成長を願っています。「1→100」の中にある「0→1」を見つける力は、本来若い彼らの方が断然高いはずですからね。鋭く見つけて僕に突き付けてくるような、こっちが泣かされるような、そういう尖ったメンバーが何十人も出てきて欲しいし、そういう組織に育てていきたいですね。

どんな人と一緒に働きたいですか? 必要なスキルはどんなものですか?

この時点でスキルはあるに越したことはないですが、それよりも大事なものがあると思っています。「自分は何を成したいのか?」という意志や想いで、もしそれがあるなら大切にしてあげたい。そういうことをちゃんと持っている人は、社会の仕組みを捉え、そこにある課題も描き出すことができるはず。こういう能力は、どの部署に行っても一番求められます。若手で目の前のゴールをクリアしているうちはいいのですが、いざ「次はリーダーをお願いね、意識を持ってビジョンを描き、ゴールを示すんだよ」となったときに手が止まってしまう。そこを超えるのは、本人にとっても難儀で周囲が働きかけたとしても限界があります。「自分が何を成し遂げたいのか」は自分でないと見つけられませんからね。

リクルートに入る前のご自分に投げかけたいメッセージはありますか?

もう20年以上も前のことですが、当時はこんなに長く働くとは思いませんでした。3カ月でお前は辞めるって言われていましたしね。そう言っていた先輩たちももう1人もいませんけど。でも、あえて言うなら、「その選択は間違ってなかったよ」って言ってあげたいですね。

PROFILE

岩佐 浩徳(いわさ ひろのり)

UXデザイン
1994年新卒入社
多摩美術大学の情報デザイン学科に通いつつ、デザイン事務所の契約社員として実務を経験。1994年株式会社リクルート メディアデザインセンター(後、リクルートに統合)入社。リクルートにおけるUI・UX設計プロセスの浸透まで現在のサービスデザインの概念を打ち出し、2000年より、リクルート初のWebサイト構築支援、ユーザインタフェース改善の横断組織立ち上げに従事。累積で100億円以上の創出効果を導き出した。紙からWebへの移行に際しては、意思決定を牽引し、各種サービスのPC版、携帯版の立ち上げなども行う。現在は、リクルートテクノロジーズにて、リクルートを横断して複数のプロジェクトを推進。リクルートのUXデザイン力全体の底上げ、スペシャリストとしてのキャリア形成と市場での人材価値向上を推進中。現在、RHDブランドマネジメント部門兼任。SDN会員、サービスデザインネットワーク Japan Chapter発起人。