『ゼクシィ』統括編集長×中堅社員で語る キャリアとライフプランの考え方

新人から若手というステップを経て、「中堅」というステージを意識し始める入社4~5年目。今後のキャリアの積み方、そして結婚や育児といったライフイベントへの向き合い方に悩みはつきない。今回は入社4年目・結婚領域でディレクターを務める藤内秋桜が、等身大の悩み、そして今後のキャリアやライフプランについての質問を、『ゼクシィ』統括編集長を務める平山彩子に聞く。

キャリアの変遷、その段階で感じたやりがいと楽しさ、そしてぶつかった壁の越え方など、今後の指針になるメッセージ、実践的なノウハウが次々に飛び出す、中堅社員とベテラン社員の刺激的な対談の模様をお届けする。

PROFILE

平山 彩子

#ビジネス総合コース #結婚領域 #『ゼクシィ』統括編集長
株式会社リクルートエージェント(現:株式会社リクルート)に新卒入社。関西エリアでの営業経験1年半を経て、『ゼクシィ』編集部に職種/領域をチェンジ。結婚領域で13年、メンバー、デスク、統括編集長・部長とキャリアアップ。現在育児をしながら業務にあたる1児の母でもある。

藤内 秋桜

#ビジネス総合コース #結婚領域 #『ゼクシィ』ディレクター
株式会社リクルートコミュニケーションズ(現:株式会社リクルート)に2018年に新卒入社。『ブライダルソリューション』推進部へ配属され、企業の広告に対する提案・原稿制作を行うディレクター業務に従事する。1〜2年目は全国の大手法人を担当し、撮影・カスタマーインタビュー・取材などを経験。現在は首都圏のクライアントを担当し、業務の幅を広げている。

領域、職種をまたいだチャレンジで新たなフィールドへ

藤内秋桜(結婚領域 ディレクター)

藤内私は現在入社4年目で、仕事の進め方から今後のキャリア、ライフプランについて考えることも増えてきて。平山さんは部長として活躍されながら、子育てとの両立もされているので、ぜひお話を伺ってみたいとずっと思っていたんです。

平山悩むこと自体は悪いことじゃないと思ってるので、今日はたくさんお話しましょう! 仕事でもできることも増えるけどできないこともわかってくる、4〜5年目はそういうタイミングだよね。藤内さんは大学時代や、これまでのキャリアでどういう経験をしてきたの?

藤内大学では国際関係学科で学び、ハワイ大学に1年間留学し、ネイティブハワイアンから直接伝統文化について学びました。また、日本酒の国際親善大使の活動を通して全国の酒蔵を巡り、その土地の料理や日本酒などを勉強したり、司会やPRの仕事をしたりしていました。

リクルートに興味を持ったきっかけはインターンシップです。リクルート=「人材」「営業」というイメージが強かったのですが、ペット事業をテーマとしたワークに取り組み、愛犬・愛猫の悩みを抱えている方にインタビューし、それに基づいた広告を作ることに面白さを感じました。自分が大事にしている「現地で学び、ニーズを見に行き、形に落とし、発信することで新しい価値観を生み出す」というこだわりを、リクルートであれば大事にすることができるのではと感じたことが入社の決め手となりましたね。

入社後は、結婚領域のディレクターとしてキャリアを積み、現在は首都圏のクライアントを担当させていただいています。カスタマー(カップル/新郎新婦)の課題やニーズを仮説・分析し、それをもとにクライアント(結婚式場)の来館数やブランディングなどを含めたコンテンツを作ることに楽しみを覚えています。4年間で関わるステークホルダーの幅や仕事の裁量権もどんどん広がってきており、すごくやりがいを感じていますね。

平山藤内さんのキャリアを聞いていると、学生時代から幅広に、興味のおもむくままに動いてきて、そのこだわりを入社後も大切にしていて、すごく素敵だなと思います。

平山彩子(結婚領域 統括編集長)

藤内平山さんの経歴を拝見していると、「HR領域の営業から、結婚領域の編集担当へ」という領域・職種をまたいだキャリアチェンジがすごく興味深かったです。どのように考えていったのか気になります……!

平山実は、大学では文学部日本文学科で、本が好きだったことから出版社を志望していました。しかし、大手出版社を受けても結果は出ず、編集プロダクションに進んで編集業務に携わろうと思っていたタイミングで、ベトナム・カンボジアに旅行に行ったんです。

そこで現地の方々の生活を見ていて、「一生懸命働いて生活していくこと自体が大事で、まずは“働く”ということにチャレンジしてみよう」と感じて。心を決めて就活を再開し、最初に内定をくれたのが当時のリクルートエージェント(現HR領域)でした。1年目でも、社会人として働くことで「成長」を実感できるんだと感じましたし、HR事業だからこそ仕事を通して、カスタマーの人生やクライアントの組織に深く関われる意義も感じていい経験だったんですよね。

皆さんのキャリアに向き合う中で、改めて自分の好きなことを考えて向き合ってみたいなと思ったんです。そうしたら「自分はやっぱり編集の仕事がしたい!」と思えてきて、当時別会社だった『ゼクシィ』の求人を見つけ、領域と職種をチェンジしたという経緯です。

藤内仕事がきっかけで自分のキャリアにも向き合われたのですね。今のキャリアにどう活きていますか? また、HR事業の営業で培ったものはありますか?

平山最も大きいのは、人生の大事な決断に携わっていたからこそ「いろいろな人のストーリー、気持ち、機微にたくさん触れる機会」があったこと。これは、プロダクト制作や編集する側に回った今でも、生活者を見ていく際の幅感、観点に生きていますね。リクルートの編集って、世の中的な「エディター」とは少し違っていて。周囲のさまざまなスタッフと協働することにこそ価値があるため、営業の経験がチームでの推進力のベースになっていますね。「編集者なのに営業の強みも持っているね」と言っていただけることも多く、経験が掛け算となって、自分の「らしさ」に繋がっているなと思うと面白いですよね

キャリアを重ねるごとに視野が広がり、新たなスタイルが見えた

藤内メンバーからデスク、統括編集長、部長というポジションごとに視座を変えてこられた中で、統括編集長、部長という役職はもともと目指されていたのですか?

平山正直に言うと最初から統括編集長を目指していたわけではないんです。編集者時代ももちろんプレイヤーならではの手触り感や楽しさがあって、どんどん記事を作りたいと思っていました。その後、デスクというリーダー的な存在に昇格してみると、戦略を考えたり、仕切ったりする仕事が多くなり、「想像以上に楽しい!」と新たな楽しさに出会うことができたんです。私自身、今でも表紙デザインの議論に携わるくらいクリエイティブな仕事もとても大好きですが、もう少し広い視界で、自分の企画を「仕掛けていく」ということにやりがいを感じました。

統括編集長の仕事はさらに俯瞰的になり、アウトプットの責任を持つこともそうですが、業界やマーケットに対するメッセージの発信、どうあるべきかを考える力、スキルも必要になる。挑戦してみたらきっと新しい自分や貢献できることが見つかると思い、まい進していたところ、縁あって統括編集長を任せていただけることになりました

藤内現在は部長としてマネジメントも経験されていると思いますが、「部長」というポジションについてはいかがですか?

平山部長については、かなり「なりたいかどうか」が問われました。私も「自分にできるのかな……」と感じていたんです。ただ、役職に関して悩んでいるときに、ちょうど部長以上のメンバーでディスカッションして決まる案件があって。マーケットに向き合う中で「私ならこうしたい」と意志がある中で、その議論に加わり、世の中を変えたいと思ったんです。そこである種の悔しさも覚えて、きちんと部長となり、主体者として推進していきたいと思いましたね。

藤内キャリアを歩む中で、仕事の楽しさを感じたエピソードをぜひ聞かせてください。

平山デスクになったばかりの時のことです。『ゼクシィPremier』という媒体の担当デスクになる機会に恵まれました。この仕事はもう……異常なぐらいに楽しかったですね。企画を考えるのは編集長と私、そしてもう一人のデスク。媒体が小さく編集部が少人数だったこともあり、自由に色々な企画を立ち上げて提案、クライアントと一緒にチームとなり、推進していき、カスタマーに新しい価値を返していくことの繰り返しで。

ドレスショーを企画し、商品の企画やショーの集客を考えたこともありました。ショーディレクターをアサインしてイベントを実施して……今でもショーの動画を見直して、「やっぱり最高で、自分の原点だな!」と思います。仕掛けていく仕事がとても楽しい瞬間だと気づけました。

デスクから統括編集長になると、今で言えばニューノーマルなブライダル提案など、マーケットを考えた発信も増えてきます。デスク時代のように自由なことばかりではなく制約も出てきますが、逆に創出価値は高まっている実感があります。メンバーからデスク、統括編集長へ。それぞれタッチポイントは変わってきますが、一貫して「楽しい」ということに変わりありません。

藤内自分の今後を考えても、とても興味深い変遷を聞くことができました。それぞれの階層でやりがい、楽しさはどのように変化していったんでしょうか?

平山メンバーのときは、一緒に働く人が喜んでくれるのがすごくうれしかったんです。たとえば、『ゼクシィ』の別冊で企画特集を立案し、共にコンセプトを作ってマーケットを独自視点で支援していく。これは携わった営業担当がすごく喜んでくれます。デスクになると、メリットがしっかり提示できる企画を提出したら、その輪にクライアントも入ってきます。そして今の統括編集長という立場では、マーケットに関わる様々なステークホルダーと共にビジョンを描いているため、業界の中での「介在価値」も感じることが多くなりました。

キャリアを積むごとに喜ばせたいと思う人が変わっていく。つまり、視野が広がり、視座が高まってきたと感じています。ただ、変わらないものがあるとすれば全ての起点はカスタマーが喜ぶこと。それを自分ではずっと大事にしてきましたね

出産・育児を経た後でも、自分の居場所がきっと見つかる

藤内平山さんのキャリアを聞いて、私も考えることがあります。今いる結婚領域で新たな挑戦をするのか、それともディレクターという職種でさらに自分を磨くべく、違う領域に挑戦するのか。自分のキャリアで強みになるものが何か、考え込んでしまうこともあるんです。

平山私もそうですよ。マネジメントしていると人の強みは見出せるけど、実は自分の棚卸しは得意じゃないですから。だけど、聞いてみて思うのは、藤内さんの経験は今後チャレンジしていく上で、すごく勇気に繋がる糧になるということ。まず、去年と今の自分でアップデートできたポイントを言語化しながら手もとに置いてみて。その作業を重ねていくと、自分のトータルスキルがわかりやすくなるんじゃないかな

あとは、誰にでもいろいろ相談してみること。私は部長の立場になって「興味のあることを口にしたり相談したりするだけで、知らない情報が得られる」とわかったんです。どんどん口に出していくだけでいいと思いますよ。

藤内平山さんでも相談されるのですね!

平山もちろん、部長になった今でもそうですよ。忙しい人をつかまえて「30分だけ、よもやま(アジェンダなしの雑談)お願いします!」ということもしょっちゅう。煮詰まったときに「聞くこと」の大切さは、マネジメントをする側になってさらに強く感じています。

藤内平山さんはキャリアを重ねつつ出産・育児を経験されていますよね。私も女性として考えるポイントですが、多くの女性メンバーが関心を寄せて、聞いてみたいところではないでしょうか。

平山そこはどうしても悩んじゃいますよね……。人それぞれのタイミングだとは思いますが、振り返ってみると、私には今でも救いになっている言葉があります。それは、「産休に入った時に悩み、考えることもあるけど、時間を経ていく中で、きちんと周りは見ているし、能力や価値観を含めてあるべき役割、いるべき場所に、適材適所でフィットしていく、それが組織だ」という同僚からのメッセージ。焦らなくても、自分だけの場所は作られていくんだ。そう思うと、少し楽になるんじゃないでしょうか。

藤内ありがとうございます! 私も悩みながら試行錯誤して、情報収集をするのですが、目の前のスキルアップを考えると、結婚・出産までに成長スピードを上げなきゃいけないのかな……と、悩んでしまうことも。

平山そうですよね、自分を振り返ってみても、そう思う気持ちはすごくよくわかります。だけど、スキルアップのスピードは出産や育児に関係ないこと。つまり男女に関係なく意識し、やっておくべきことだと思います。そして、それが次のチャレンジにつながっていくもの。成長理由を出産・育児に置いているとしんどくなっちゃうんじゃないかな?

藤内なるほど!少し肩の力が抜けた気がします。平山さん自身は、育休からの復帰を振り返ってみて、その時の思いはいかがでしたか。

平山育休前までは「自分が『ゼクシィ』のことを一番考えている」という自負がありました。だから、仕事について考える時間が減ったことを後ろめたく思うことも……。そんな時、当時所属していたリクルートマーケティングパートナーズの社長だった柏村美生さん(現・株式会社リクルート執行役員)との面談で大きな気づきがありました。当時30歳半ばでライフスタイルが一変し、仕事に時間を割けなくて考え込む私に、柏村さんはこう言ってくれたんです。

「時間がなくなるなんて、当たり前のことだから。いきなり環境が変わったからといっても焦らなくて大丈夫。子どもを産まなくても35歳という歳は、自分の働き方について振り返り、これからを考えるようになる時期。頭打ちになったら、介在価値の出し方を変える転換期でもある。私もそうだったんだから。あなたも仕事のやり方を変えるタイミングが来ているんじゃない?」

この言葉にも、すごく救われました。介在価値の出し方を変える転換期――今までの自分と比べなくてもいい。違う形、違うアプローチで介在価値を上げるにはどうしたらいいか? を考えるようになりました。

藤内平山さんが救いになった柏村さんのメッセージ、私もしっかり覚えておこうと思います。育児と両立しながらの仕事の実状はいかがでしょうか。

平山子どもが急に熱を出して、どうしよう……と困惑する、そんな大変さはもちろんあります。ただどこの部署も、子どもの急なトラブルへの許容や情報共有、助け合いもありますし、働くお父さんたちもお迎えのスケジュールが入っていて、リクルートではそれが当たり前の環境なんですよね。

私も、育休から復帰するメンバーには「復帰した直後に頑張りすぎないで。2か月後が一番しんどくなるから!」と経験を伝えています。先輩ママとして、部署の垣根を越えて、広くメッセージしていきたいと思って動いています。

自然体でマーケットをつかむ大切さを大事に

藤内仕事の悩みについても相談させてください。デスクから統括編集長への変遷でも伺ったように、マーケットに視点を向ける大事さは私もわかっているつもりですが、自分はディレクターの経験しかなく、どうしても個々のクライアントに目が向いてしまいます。「マーケット」という大きなものをどうやって捉えたらいいのか……考えてしまうこともあります。

平山つまりマーケターの観点・視点ですね。私は、マーケターは「生活者視点」を自然と持つべき、生活者視点の感度を弱めないことを意識するべきだと考えています。これはどういうことかというと、マーケットを遠いものじゃなくて、世の中の空気として捉えること。たとえば、街を歩いていて「こんな言葉尻を最近よく聞くな~」とか「この飲み物を飲んでいる人が増えてない?」などと、シンプルな感覚に向き合うことが大切です。この積み重ねが、「あの要素って結婚に結びつくんじゃない? 最新データはどうなっているだろう?」と、世の中にアンテナを張って、データと関連して考えていくことにつながっていきます。

マーケットって「遠くにある運動場」のイメージかもしれないけど、実はこの生活の空気や匂いの積み重ねでできていると思っています。だから、常に自分の中で仮説を持ちながら耳をそばだてていく。すると、紐づくデータを自然に収集して自分の中にストックしていけます。

こうして引き出しを増やしていくことができるんです。今でも必ず『ゼクシィ』が発売される度に書店にいき、お客さんが本を手に取る瞬間を見に行っているんです。メンバーがデスクになったときも、「毎月定点観測に書店に行ってみたらいいよ」と、よく言っていますし、実践していけば、必ず自分の強みになります。

藤内すごく参考になりました。マーケットを広く捉えることも、カスタマーにとって本当にいいものを考えていくことにつながりますね。そこで私が思うのは、コロナ禍で少人数、オンライン化など結婚のかたちが多様性を増す中、それぞれが主体的に選べる世界をさらに考えていかねばということです。関わる人、それぞれがWin-Winになれるバリエーションが増えていけばいいな、と思うのですが、今後の結婚領域について、平山さんはどのようなビジョンをお持ちですか?

平山藤内さんが指摘した、いろいろな結婚のかたちのあり方を考えること、それは今後の結婚領域を考えていく上で大切な視点だと思います。私も、世の中的には注目をされる数字である「婚姻組数」を今大きく伝える必要があるのだろうか? と思うことはよくあります。誰かと一緒に生きていくことを決めた人が分母になるといい。いろいろな生き方や選択肢としてさまざまなパートナーシップのバリエーションがありますが、ライフイベント、区切りとしての「結婚」の重みは変わらないと思うので、その視点を大事にしていければと考えています。

藤内ありがとうございました。統括編集長へのインタビューということで最初はすごく緊張しましたが、平山さんが本当に自然体で素敵で。エピソードやこだわりを聞いて、この先の人生を考えることに対して気持ちが軽くなった気がして楽しみになりました。多くの若手社員、学生さんにぜひお伝えしたいなと思いました。ありがとうございました!

平山私もこれまでのキャリアを振り返るという機会をいただきました。藤内さんとの対話であらためて感じたのは、「自分にとって何が一番なの?」と踏み込んで考えることの大切さです。学生の皆さんには、コミュニケーションを通して相手を知ることの大事さを知ってほしい。それが自分の好きなもの・譲れないものを知ることにつながると思います。そして、今後キャリア・ライフプランの描き方に悩んだらいつでも語りましょうね……!

好きな瞬間の一コマ

出勤&登園前の早朝さんぽがリフレッシュタイム

寒くない時期は、朝の7時頃に子どもと家を出て近くの川縁を散歩し、ベンチでパンを頬張るのが日課。清々しい気持ちになってお気に入りです。(平山 彩子)

地元の夕焼け空

地元北陸に帰るとご飯や温泉も楽しみですが、美しい夕焼けに癒されています。夕焼けを見ながらビーチヨガをすることもあり、リフレッシュになります!(藤内 秋桜)