「世界を変える仕事」を求め、IT先進国・中国からやってきた。データサイエンティスト・李石映雪がリクルートで働く理由

李 石映雪/株式会社リクルート住まいカンパニー ネットビジネス統括本部 データソリューション推進部

“IT巨人”とも称されるGAFAの台頭に「待った」をかけるかのように、Alibaba TencentをはじめIT企業の急拡大がめざましい中国。あまたのユニコーン企業を輩出する同国から、とある学生が新卒でリクルートを選び、来日した。リクルート住まいカンパニーでデータサイエンティストとして働く李石映雪だ。データのスペシャリストとしての実力を発揮しながら、3年でチームリーダー、6年目でマネージャーとして手腕を振るう。

なぜ彼女は、急成長企業が次々に生まれる中国ではなく日本を選び、なぜリクルートで働くのか。意思決定の背景にある、職業観に迫った。

PROFILE

李 石映雪

株式会社リクルート住まいカンパニー ネットビジネス統括本部 データソリューション推進部

2013年新卒入社。北京大学ではComputer Scienceを専攻。在学中、リクルートホールディングスが手がけるグローバル人材獲得プロジェクト『WORK IN JAPAN』を通じてリクルートに内定。現在はプログラミングやデータ解析の若きスペシャリストとして、不動産情報サイト『SUUMO』の開発・運営に携わる。

「なんでもできます」の一言に惹かれ、中国から日本へ

李さんは中国出身で、リクルートへの入社をきっかけに日本に来たとお聞きしています。まずは、入社のきっかけについてお伺いさせてください。

李 石映雪(株式会社リクルート住まいカンパニー ネットビジネス統括本部 データソリューション推進部)

日本のさまざまな企業の方からお話を聞ける新卒採用プログラム「WORK IN JAPAN」に参加したことが、入社のきっかけです。在籍していた北京大学での説明会に、主催企業であるリクルートホールディングスも参加していて、選考を突破すると最終面接を日本で行うというものでした。

当時は先々のキャリアについて真剣に考えておらず、「旅行で日本に行ける!」程度の感覚で試験を受けましたね(笑)。

なぜ、数ある参加企業の中で、リクルートの入社試験を受けられたのでしょうか。

AIや機械学習といった最先端技術を積極的に活用していたことが、決め手でした。私が新卒で入社した2013年ごろは、まだまだAIをビジネスに活用している企業が少なかった時期です。しかしリクルートは、豊富なデータを活用し、データドリブンな経営への移行を進めていました。自分の専門技術を活かして活躍できると思ったんです。

他にも就職先として検討されている企業はありましたか。

地元中国のIT企業に就職することも選択肢の一つでしたが、“分業意識”が強く、自分には合わないと感じていました。技術者は開発に専念するのが当たり前だったので、「何を開発するか」を決める、上流の工程に携わりにくかったんです。でも私は、もっと裁量権を持って仕事がしたかった。

自分に合う企業がなければ、アメリカに留学して修士を取ろうかとも考えていましたが、リクルートに出会ったことで進路が決まっています。

リクルートは、李さんのスタイルに合う企業文化だったと。

そうですね。入社前、人事の方に、「技術者でも上流の工程に携われますか?」と尋ねると「なんでもできます」と。「データは豊富ですか?」と聞くと「例えば結婚と住宅などライフイベントのサービスから、日常的にユーザー接点を持っている美容・飲食サービスまで持っているから、ユーザーの人生のいろんな側面に関わることができる」とおっしゃるので、日本語も喋れないまま“ノリ”で入社を決めました。

テクノロジーを原資に、利益を生み出す。「SUUMO」を劇的に変えた取り組みの裏側

入社後はどのような業務に従事されてきたのでしょうか?

入社したリクルートホールディングスから、不動産ポータルサイト「SUUMO」を運営するリクルート住まいカンパニーに出向し、データサイエンティスト(機械学習エンジニア)として「SUUMO」のCVR改善に取り組んできました。たとえば、レコメンド機能の開発です。

具体例を挙げると、情報のパーソナライズ。従来の不動産ポータルサイトは、ユーザーが目的の情報に辿り着くまでに、何度もボタンクリックを繰り返す必要がありました。それを改善するため、ユーザー毎にサイトを訪問した際の閲覧履歴からパーソナライズした情報を表示する機能を実装したんです。

他にも、より「使いやすい」と感じられるUXを目指し、複数の施策を実装しています。たとえば、検索時に上位表示させる物件の選出方法を改善しました。

具体的には、過去はエリアの家賃相場と比較し割安な物件や新着物件など、一般的にクリックされやすいと思われる物件が上位になりやすいロジックを採用していました。しかしこのロジックでは、同じ検索をするユーザー全員に同じ結果を見せることになります。より使いやすくするために、ユーザーの検索条件や過去閲覧した物件に基づいて、その人が好みそうな物件を上位表示させるパーソナライズモデルへとシフト。一人ひとりに合った情報を提供することで、家探しにおける“不”の解決に取り組んできたんです。

ユーザーの利便性を追求し、サービスの改善に取り組まれてきたんですね。

おっしゃる通りです。しかし、施策の実施は容易ではありませんでした。レコメンド機能の向上を目的にアルゴリズムのテコ入れを提案したのですが、突然複雑性の高いシステムを接続するわけですから、非常に大きな要求変更です。

また、いざ実装しようとなると、他部署の協力を得なければなりません。何百万人ものユーザーが利用するプラットフォームなので、関わる人もそれだけ多い。当時は相談なしに突然の要求ばかりしていたので、怒られてしまったことも少なくありません(笑)。

ただ、結果的にコンバージョンレートがおよそ10%向上し、事業にとって欠かせないシステムになりました。過去を振り返り、最も印象深いプロジェクトになっています。

破天荒に思えることでも、理由があって、筋が通っているなら、やらせてくれる。その裁量権の大きさは、リクルートの大きな魅力です。あれこれ提案を続け、頭と手を動かし続けてた結果、自分の仕事の幅をより広げていくことができました。

リクルートで見つけ、リクルートで叶えた「世界を変える」夢

李さんが考える、リクルートの魅力について、より詳しく教えてください。

文化の側面で言えば、先ほどの話と重複しますが、年次や役職に関わらず「やりたいことをやらせてもらえる」のが特徴です。失敗に寛容で、結果はどうあれやり切るまでサポートをしてくれます。

また、人に投資する企業だと思います。個人のスペシャリティを伸ばすことに熱意を持っていると感じますし、提案をすれば、専門性を拡張する機会をもらえる。実際私も、新規事業開発に興味を持ち、レコメンド機能の開発を担当しながら、新規事業のプロダクト開発を兼務した経験があります。

データサイエンティストとしては、とにかく膨大なユーザーデータを抱えていて、それを活用できる開発体制が整っている点は魅力です。正直なところ、機械学習を採り入れたプロダクトは他社もやっていますし、自分でつくること自体も、そこまで難しいことではありません。

ただし、すべてのサービスが機械学習にとって根本的に重要な高品質かつ大量のデータを自分たちで持っているわけではない。一方で、国内物件数No.1の不動産・住宅情報サイト*である「SUUMO」には、膨大な自社データを保有していますし、若手にも大きな裁量が与えられます。この環境だからこそ、世界を変える仕事ができていると感じるんです。

*不動産ポータルが掲載する賃貸、マンション、戸建、土地の日本全国総計 2019年9月末時点(株)東京商工リサーチ調べ

なぜ、膨大なデータを扱う「SUUMO」に関わる仕事が、「世界を変える仕事」だと感じるのでしょうか。

私は小さい頃から、「世界を変える仕事がしたい」と思っていました。では、「世界を変える」とはどういうことか。自分の見える景色を変えたり、他人に影響を与えることの積み重ねだと私は思っています。手がけたプロダクトで人の行動が変化すれば、それはある意味、世界を変える仕事。その点、「SUUMO」には、数多くのユーザーとそれに紐づくデータがある。つまり、変えられる「世界」の範囲がとても広いんです。

また「不動産」という、ユーザーにとって「大きな選択なのに、不透明性が高い」領域を扱っているのも、「世界を変える仕事ができている」と感じる大きな理由です。

以前は不動産に強い興味があったわけではありませんが、自分が家を借りたり、購入することを想像すると、心配なことや不安なことばかりが思いつきます。きっと、私以外にもそうした人はたくさんいるはず。自分が手がける仕事は、そうした懸念を払拭する可能性があるわけです。

社会に与えられる価値が大きな仕事を、大規模に手がけられることは、私にとって非常に大きなやりがいになっています。

シェアエコノミー以来の衝撃を、ここリクルートから生み出す

プレイヤーからマネージャーへと職務を変え、李さんの見ている世界も広がってきていると思います。今後は、どのようなキャリアを考えているのでしょうか。

データという言葉が流行り始め、データ・ドリブンなプロダクトが散見されるようになりました。ただ世間を見渡すと、ユーザーがお金を払ってでも使いたいと思える機械学習がコアになっているプロダクトは、まだまだ少ないと思っています。

たとえば、シェアリングエコノミーサービスが誕生したときは、大きな衝撃を受けました。当然データやAIを活用したサービスですが、あくまでもコアは「シェア」という発想にあり、データはあくまで、サービスの普及と成長をアシストするものです。

データをコアコンピタンスに据えたプロダクトであっても、ユーザー視点で「そのデータなしでサービス利用を考えられない」と感じるサービスには、まだ出会えていない。なので、私自身が作り手になることを第一に考えています

そしていつか、そうしたサービスが当たり前に存在する時代をつくる担い手になりたい。それは「世界を変える仕事」だと思いますし、リクルートには、それを生み出すポテンシャルがあると信じています。

今後も「世界を変える仕事」をし続けるために、李さんは、どのような人材と一緒に働きたいと考えていますか?

データが好きで、データで世界を変えたいと本気で思える方と働きたいです。また個人的には、専門性を一つに絞って専念するより、専門性を活かし、プロダクトを世界に広げることに興味があると嬉しいですね。

リクルートは裁量権が大きな会社なので、何事にも挑戦するタフな人材が活躍しやすい環境だと思います。世の中にインパクトを与えることが楽しいと思える人と、一緒に世界を変えていけたら嬉しいです。